お役立ちコラム
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アスベストとは?建築における危険性とその対策と支援制度について
2022年10月19日お役立ちコラム
アスベストとは何かご存知でしょうか。
今では使用禁止となっているアスベストは、かつて建築資材として頻繁に使用されていました。
使用されていた理由は何か、なぜ現在では使用禁止となっているのか、知らない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、アスベストとは何か、なぜかつてよく使用されていたのか、使用禁止の理由は何かについて説明します。
また、アスベスト対策や支援制度についても説明しますので、今後アスベスト対策をする予定の方はぜひ参考にしてください。
アスベストとは?|昔は使われていたが実は危険な建築資材
アスベストは石綿とも呼ばれており、天然鉱物線のひとつです。
断熱性・耐火性に優れ、防音効果、絶縁性と結露対策にも期待できる上に安価で入手可能でまさに万能な資材です。
アスベストはさまざまな用途使われ、実に3,000種類以上の用途があったとされています。
かつては頻繁に建築資材としてよく使われており、高度成長期にはビルなどの鉄骨構造建物にも大量に活用されていました。
以上からもわかるように、アスベストはかつて、私たちの生活になくてはならない存在となったのです。
しかし、2006年、アスベストの使用は全面的に禁止となりました。
アスベストの種類とは?4つを解説
アスベストが禁止になった理由を解説する前に、かつてよく使われていた4種類のアスベスト含有建築資材について解説します。
● 吹き付け
● ロックウール
● 保温剤・断熱剤
● 成形板
上記の資材の用途とその効果についてこれから詳しく解説していきます。
種類① 吹き付け|アスベストとセメントを混ぜたもの
アスベストとセメント、水を加えて混ぜ合わせて作られた吹き付けアスベストは、壁や天井などに吹き付けて使われていました。
吹き付けアスベストには以下のような効果が望めます。
● 防火対策
● 耐火対策
● 吸音対策
● 結露対策
アスベスト含有率は約60%〜70%で、壁・天井に剥き出し状態で吹き付けられます。
種類② ロックウール|人工鉱物繊維
アスベストの使用は1975年に原則禁止となりました。
その後、アスベストの代替として使われるようになったのがロックウールです。
ロックウールは、人工鉱物繊維で今でもよく使われる素材ですが、かつてはロックウールにアスベストを含ませた製品が出回って使われていました。
種類③ 保温材や断熱材|アスベスト含有率が高い
アスベストはボイラー室や化学プラント、倉庫などの金属板屋根の裏などに保温材や断熱材として使われる場合もありました。
吹き付けアスベストの比率を超える90%以上ものアスベスト含有率の資材もあり、解体作業などでアスベストが大量に飛散する可能性があります。
種類④ 成形板|スレート・石膏・サイディングなど
成形板は、細かい繊維を集めて作られるもので、かつてアスベストを含む成形板も頻繁に疲れていました。
代表的なもので、スレートや石膏、サイティングなどがあります。
板状に固めているため、飛散する可能性は他の資材と比べると低いです。
アスベストが危険な理由|健康被害の内容を解説
アスベストは建築資材としてさまざまなところで使われていました。
では、なぜアスベストが全面禁止にまでなったのでしょうか。
それは、アスベストは体内に取り込むと健康に害を及ぼすものだからです。
飛散したアスベストが肺に付着し、長期間アスベストを吸い続けると以下のような病気を発症するリスクがあります。
● 石綿肺
● 肺がん
● 悪性中皮腫
また、アスベストは吸引してからすぐに症状が出るわけでなく、何十年も経ってから発症します。
そのためアスベストが頻繁に使われていた当時は有害である事実は全く気づかれませんでした。
2000年に入る頃にアスベストを扱う企業の従業員とその家族の病死によりようやく危険性が認知されるようになったのです。
所有建築物がアスベスト含有かも!そんなときの対策3つ
2000年初頭までアスベストが頻繁に使われていたため、現在でもアスベスト含有の建物は多く残っています。
自分が所有する建築物もアスベストを含むかもしれない、そんな不安がある方のためにできる対策をご紹介します。
これから解説する対策は、全て専門業者に依頼をして行う対策ばかりですので、自分達では行えません。
そのため、費用ももちろん発生します。
費用がかかるため対策をためらう方もいるかもしれません。
しかし、家族や自分が病気にならないためにも必要な対策です。
今後の健康被害を防ぐためにも対策をしっかりと講じるようにしましょう。
対策① 調査を依頼
所有建築物にアスベストが含まれているかどうかは、まずは建物の購入先への聞き取りから始めます。
● 建築物の施工を依頼した工務店などに問い合わせ
● 建売住宅を購入した場合は購入先の業者に問い合わせ
● 設計図書、施工図などから材料に何が使用されているのか確認
● アスベスト調査の専門家に現地調査をしてもらう
工務店や業者問い合わせしたり設計図書を確認してもアスベストが使用されているかどうかがはっきりしない場合もあります。
そんな場合も含め、最終的にはアスベスト調査の専門家に一度所有建築物の現地調査をしてもらいましょう。
アスベスト専門家による調査は、アスベストが含まれているであろう場所のサンプリングをして、成分分析をして結果を明らかにします。
この時、アスベストが含まれていると判明した場合は早急に対策②を実施するようにしましょう。
対策② 飛散防止工事をする
対策①による調査で、所有建築物がアスベスト含有であると明らかになったらすぐに対策工事をしましょう。
対策工事とは、アスベストが周囲に飛散して健康被害を拡散させないための飛散防止工事です。
アスベスト飛散防止工事には3種類の方法があります。
● 完全にアスベストを取り除く「除去工法」
● 薬剤などをアスベストに浸したり、膜をサンプしてアスベストの飛散を防ぐ「封じ込め工法」
● 板などを用いてアスベストが含まる部分を覆い隠す「囲い込み工法」
確実にアスベストがなくなり、将来的にも安心できる方法は1つめの「除去工法」です。
他2つの「封じ込め工法」や「囲い込み工法」は、所有する建物を解体する際に改めてアスベストを除去する必要があります。
この2つの工法は、除去工事よりは安価に工事ができるため、将来的に完全に除去するまでの繋ぎとしての対策といえるでしょう。
対策③ アスベストを含む建築物の解体工事は飛散防止措置を
所有する建物がアスベストアスベスト含有建築であると判明し、建物を解体する場合も注意が必要です。
なぜなら、建物を解体する際、どうしても粉塵が舞うからです。
粉塵にアスベストが含まれていると、周辺に舞って隣家や通行人が吸引してしまう可能性があります。
解体工事においてのアスベスト飛散防止対策には以下があります。
● 水分を含ませてアスベストを湿潤化する
● 集塵・排気装置で負圧化する負圧隔離する
● 保護具などを着用して作業する
● 建物を飛散防止シートで完全に覆う
アスベストを含む建築物を解体する際は、厳重に注意して作業をしなければなりません。
作業する業者はもちろん、建物所有者や近隣住民が安心して生活していくためです。
アスベストの法規制を紹介
これまで説明してきたアスベストですが、法律でアスベストの使用は規制され、その対策に関しても多く記されています。
アスベストに関連する主な法令をご紹介します。
● 建築基準法
● 建設工事にかかる資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
● 労働安全衛生法(石綿障害予防規則)
● 大気汚染防止法
● 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
● 宅地建物取引業法
● 住宅の品質確保の促進等に関する法律
以上のような法令には、アスベストの使用禁止、アスベストの解体等作業の届出と作業基準についてなど厳しい規則が記されています。
また、アスベストの除去工事を行う労働者のためのアスベスト暴露防止措置なども規定されており、労働者の安全も固く義務付けられているのです。
アスベスト対策の支援制度|工事や調査費用を負担可能な場合も
アスベスト対策は、専門業者に依頼しなければならず除去工事はその分の費用もかかります。
国や地方公共団体は、アスベスト含有建築物を所有する人のための支援制度をいくつか打ち出しています。
● 優良建築物等整備事業(アスベスト改修型)
● 日本政策投資銀行(融資)
● 国民生活金融公庫、中小企業金融公庫(低利融資)
国はアスベストの除去工事・囲い込み工事・封じ込め工事に対しての補助制度も構えており、住む地域の地方公共団体によっては地方公共団体独自の補助金制制度も存在します。
補助金を受けるには地方公共団体などに事前相談へいき、その後アスベストが含まれるかどうかの調査ののち除去工事を開始します。
その後、工事完了報告を提出し受理されて補助金の受け取りが可能です。
まとめ
これまでの解説で、アスベストは人の健康を脅かす素材であると分かっていただけたのではないでしょうか。
アスベストは国や地方公共団体、法によって規制されるほど危険なものです。
今現在でもアスベストを使用した建物が多く残されています。
ご自分が持つ建築物にアスベストが使われている可能性が少しでもある場合は、積極的に調査を依頼するようにしましょう。
そして、今後自分が健康被害に遭わないためにも、また周辺に住む方に飛散させないためにも除去工事や解体工事によるアスベスト除去をするようにしましょう。